
ロメオ・カステリッチ演出/ダンテ『神曲ー地獄篇』を観る。
http://festival-tokyo.jp/program/inferno/
まず最初に本物のシェパードが壇上に何匹もあらわれた時点で
度肝をぬかれる。あたりをおおいつくす生臭い獣の匂い。
調教師たちによって一応それぞれ鎖につながれながらも、
狂ったように吠えつづける犬たち。
突如、監督がおすもうさんの肉襦袢のようなものを
体にまといだす。
あ、まさか、と思う間もなく、舞台左から
別のシェパードが一目散に監督めがけて走りこみ、
めいいっぱい肉襦袢に噛み付く。
さらにもう1匹、あとからさらにもう1匹。
のたうち回る監督。監督に噛み付いて放さない犬たち。
ワンワンワンワンワンワンワンワン
壇上のシェパードたちはなおも
何かを恐れるように吠えつづける。
やあ、しょっぱなから手に汗握った。
一番前の席だったもので
(ものすごい気合いで、いい席とりましたのよ)
人間ではない動物の生々しい息づかい、
かれらの凄まじく鋭い目といい、マジでこわかったっす。
http://www.youtube.com/watch?v=LOv3QsyJG2I&feature=related
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この映像でも一瞬流れる、会場一体をおおう白い布、
そこから見える乳白色の荘厳な光も体感できました。
死ぬ瞬間て、こういうものが見えるんじゃないかなあ、なんて
ふと思ったほど。
http://www.youtube.com/watch?v=6-vKStslwzM&feature=related
デイヴィッド・リンチ、マシュー・バーニー、
エイフェックス・ツイン、飴屋法水等
お好きな方ならおそらく好きでありましょう。
心臓を素手でさわられるような感触の、
体の芯のほうがおもしろいと感じた舞台だったのだけど、
さらに濃いことには終演後、
カステリッチ監督と飴屋法水監督のトークショーまで観覧。
飴屋さん。
こないだからなにかと飴屋さんづいてますが、
ほんとおもしろくて正直で切実で、
着てるコートなんかまるで吉野朔実の漫画の登場人物が着てる
すてきなコートみたいだし(?)、
というか世界でもグレン・グールドの次に
「いついかなるときもコート着用」がおそろしく自然な人だし、
虚構や現実の違いがわからないと言ってたことなど、
なにかといろいろ共感できる感じでした。
とくに面白かったのは、二人の同年齢の劇作家が、
まるで何かの符号のように、キーパーソンとして
アンディ・ウォーホールを舞台に登場させていたことが
判明したくだり。
カステリッチ監督は、アンディ・ウォーホールについて
こう話していました。
「彼は既存の概念をひっくりかえす、悪魔的存在でした。
なんでもない退屈であるはずの物を、
彼はアートに転じさせたのです。
白を黒に転ずる者。哲学者、といっていいと思います。
私は彼を現実と虚構の狭間の水先案内人、
ルシファーとして、舞台に登場させました」
一方で飴屋氏。
「80年代はじめか70年代終りかに、日本のCMに
アンディ・ウォーホールが出演していた時期がありました。
ビデオテープだか何だかのCMだったと思うんですけど、
その中でウォーホールは光の3原色を
日本語でしゃべっていました。
『アカ、アオ、キ』と、ここまではわかるんです。
実際のウォーホールは、何故かそのあとに
『群青色』と付けるんです。で、最後に『キレイ』と。
このCMは、広く日本のお茶の間で
くりかえしくりかえし流れました。
僕はその『群青色』がやけに気になって、
いろいろまあ、調べたんですね。
何故ウォーホールは『群青色』をわざわざ付けたのか。
彼について調べるうちに、彼がすごく読みこんでいたという
1冊の本に出会いました。それは『チベット死者の書』という
チベット仏教や哲学に関する書でした。
その中に、群青色というのは人が死ぬ瞬間に見える色であると
書かれていたんですね。僕はこれは、偶然ではないと思った。
おそらく群青色が死の色であるということを、ウォーホールは
知っていたのだと思います。
知っていて、死の色である『群青色』というメッセージを、
ブラウン管からくりかえしくりかえし流れるよう、
彼はその言葉を付け足した。
僕はこのときのCMに使われた彼の声を、
くりかえしくりかえし舞台で流しました。
悪魔的である。ひじょうにそれは、わかります」
なんともおそろしく面白い話ではないですか。
他にも、お互い動物がなぜこんなに好きなのかという話とか
(飴屋氏は子どもの頃からあまりに動物が好きで、
動物的な俯瞰の視点から人も見てしまうのらしい。
ゆえに思春期にはいったときには
「なるほど。これが発情期」とか
タラコを見ても「人とはタラコみたいなもの。
でもタラコの粒でもそれぞれ少しずつ違いはある」
などと思っていたし今もそうであるとのこと。)
「現実」ってその瞬間から粉々になってゆくもの、
そう感じるのは自分が病んでるせいかもしれないけど、
などの話とか、やはり濃い人どうしの相乗効果で
大変スリリングかつつっこんだ話が聞けて、
たいへん面白かった。
さて、そうして来週はひきつづき
カステリッチ監督の『煉獄篇』である。
ものすごい楽しみなのである。
ひょっとするとDVDも買うつもりなのである。
あー、オタクってつくづく楽しいなあ。